高橋ユキさんに聞く、フリーライターのリスクとニュースレターメディアを持つ理由 | theLetter ストーリー #4 高橋ユキの事件簿

フリーライターの高橋ユキさんに、ライターが theLetter を活用するメリットや活用方法をお聞きしました。
theLetter運営 2022.05.19
誰でも

theLetter ストーリーは、theLetter 上で活躍する書き手の方々に、ニュースレターの配信方法や活用の理由などを深堀りして共有する theLetter 公式ニュースレターのコーナーです。

4 回目の theLetter ストーリーでは、日々の事件報道の読み解きや裁判の傍聴記録を配信している「高橋ユキの事件簿」を運営されているフリーライターの高橋ユキさんに、自身のニュースレターメディアを持つ理由や、フリーのライターが日々感じているリスクとその対策について共有いただきました。

高橋ユキの事件簿 - theLetter
高橋ユキの事件簿 - theLetter

サマリー

  • フリーライターの仕事を安定させるためにも、ニュースレターを含めた収入の多角化が必要

  • 返信機能で読者のニーズを掴みながら配信する

  • ファクトだけでなく、自分の内面を反映する

  • ニュースレターのクローズドな側面を活かし、記事に独自性を出す

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雑誌の休刊で感じた出版・メディア業界への危機感

2018年に月刊誌「新潮45」が休刊に至った一連の騒動は、同誌に記事を執筆したことのある1人として、大きな事件でした。休刊前の部数も落ち込んでいたと言われており、ノンフィクションはもう世の中に求められていないのではないか、と感じたからです。

でも、事実を知りたがっている人がいなくなったわけではないだろう、とも思い、最終的にノンフィクションの「見せ方」について、1人で試行錯誤してみようと思い至りました。

それからは新しい発信方法を自分なりに模索するようになります。theLetter もその一つです。theLetter は書き手が一つ一つの独立したサイトを持てるので、自由度が高いのがありがたいです。

また出版業界の現状を見たとき、今後、媒体から受ける仕事だけで生計を立て続けられるのかということも、不安に思いました。

さらに、紙媒体と違ってウェブ媒体では取材費が出ないところが多いです。自分でいろんなサービスを使って発信を行い、それを読みたいと思ってくださる方に直接届けることで、取材費を賄えないかと考えました。

加えて、ウェブ媒体は仕様や規約が常に変化する点も書き手にとっては不安材料のひとつです。プラットフォーム側(例えば Google や Yahoo!ニュースなど)の規約変更によって広告収入などに影響が生じれば、ウェブメディアの原稿料もそれに応じて変動することになります。

将来どうなるかは誰にも分からない。そもそもフリーランスのライターというのは、連載がなければ定期的な収入を得ることができません。媒体への寄稿だけで10年先も生き残っていくという未来が、自分にはなかなか見えてきませんでした。

一番理想的な状態は、媒体での執筆活動以外の仕事でもお金を稼げていること。例えば、講演などで収入を得ているライターさんなどもいらっしゃいます。私は、ニュースレターというのもその一つの選択肢かなと思うんです。

収入の間口をいろいろ持っておくことが、一番リスクヘッジができると思っているんですよね。私の場合は書く場所をいくつか持ちながら、配信イベントも開催したりしています。これといった正解が見えないので、今はいろいろやりながら試している段階ですが、根底にあるのは収入源を多角化したいという意識です。

プロのライターが個人でニュースレターを配信する理由

実用的な話でいうと、定期的に発信し続ける仕組みを持つことができたのは私にとって利点でした。というのも、ブログと違ってニュースレター配信は読者と直接つながっている感が強く、読者の顔が見えやすい感覚があります。雑誌の連載を書くように、原稿を出し続けるモチベーションがある状況というのは、自分にとってかなり大きなメリットになっています。

読者の方々を意識しつつも、自分の好きなように書ける場所を持てることは重要です。よりライターとして成長できるスペースになるかもしれません。

かつては雑誌が若手ライターにとって成長の機会として機能していた側面があります。経験がある優秀な編集者が伴走しながら、ライターやジャーナリストを一人前に育てていくという文化がまだありました。

しかし、ウェブには、私の知る限り、ライターを育てる文化はあまり感じられません。ライターにとって、媒体の仕事を受けることによるキャリア形成というのは年々難しくなってきているんじゃないかなと感じています。

そもそもフリーの人は、プロとして受ける分、自分を成長させてほしいからここで仕事をしたいとは言えません。頼みの雑誌も、私の分野に関して言えば、フリーランスとして書かせていただける機会は確実に減ってきています。

何をどのように書けば読者に満足してもらえるのかという点は今でも常に試行錯誤しながら書いています。一昔前に、ブログをやっている頃、毎日のように傍聴して毎日のようにブログを更新していました。自分としては、とにかくたくさん書くことで自分の欠点も見えてくると思っています。

今って失敗が許されないような世の中になっているけど、失敗もした方がいいと思うんですよ。たまには人に怒られたりとか。この記事のこれがよくなかったと突っ込まれたりとか。そういう恥ずかしい思いをすることで、何がダメだったのか自分なりに考えるんですよね。

自分は完璧な人間じゃないので、これまでたくさん失敗してきましたし、これからもそうだと思うんで、失敗を怖がらなくていいんじゃないかっていう感じがしますね。私がもっと若くて時間がある人間だったら、今は週 2 ~ 3 回の配信ですが、週5とかでニュースレター配信をやるかもしれません(笑)。

媒体の編集者さんたちは、私がニュースレターをやっているっていうことを意外と知ってくれています。予想に反して「いいですね」と褒めてくださることがあります。怒られるのかなと思ってどきどきしていたんですけど(笑)。

昔って、ここの媒体で書いているからこっちの媒体では書きづらいとか、割とそういうのもあったんです。でも、今は自分で自分の価値を上げていこうと努力することが悪くはないという風潮になってきたのかなと感じます。

書き手が成長する場を自分で持つということは、媒体側も悪いようには思っていない。なので若い方もどんどんニュースレターを書いた方がいいぞ、っていう結論につながりますね(笑)。

たまに、ウェブ媒体の編集者さんから theLetter で執筆していることをウェブでも書いてほしいと言われることもあります。ウェブメディアであるということを意識しながら、もう少しプライベートで自分の素を出せるようなニュースレターが私にとって理想的なのかなと今は考えています。

「自分の内面」をニュースレターで表現するメリット

実際に使い始めてみても、theLetter にはたくさんのメリットがありました。特にニュースレターへの返信機能を使って、読者の反応が見える点は非常にありがたいです。

読者の方々が、こちらが何を考えて書いているかというところまで分かってくれている、と実感することができています。これは、むちゃくちゃ嬉しい。

たとえば、ニュースレターに登録してくれている読者の方は、私の SNS もフォローしてくれている方が多いと思うんですけど、そういう方々がどんな思いでフォローしてくれているのかなって、いつも怖かったんです。

監視することが目的のフォロー、というのもありえなくはないと思うんです。私の非を見つけて引きずり下ろしてやるぞっていう人もいるでしょう。でも、そうじゃない人もいるということが分かって、すごく嬉しいし、何よりやる気が出ます。

いただいたニュースレターへの返信には、基本的には全部目を通しています。中には「こういう立場の人でこういうふうなことを思っていたんだ」と読者さんの傾向が分かるような返信も少なくありません。読者理解を深めるためにすごく重要なツールです。自分が書いた記事のこういうところがいいと思ってくれているんだ、というのがいただいたメールから分かったりするので記事制作に活かせています。

返信機能を使って、読者の方々が送ってくれる質問も記事のテーマとして使わせてもらって回答したりします。そうすると他の読者の方にも喜んでいただけたりします。

あるとき「なんで SNS のプロフィール画像がイカつい男性なんですか」という質問がきたことがありました。その質問に答えるためには、「SNSで自分が女性だと思われたくない理由」について書かないといけませんでしたが、ものすごく長い話になりそうでした。そこで、そのメールに返信するだけではなくエッセイ記事として発信したのですが、これが思った以上の反響で、新規の読者もかなり増えました。

取材を元にファクトを伝える記事ばかり書いているので、自分の内面を伝えることにいまだに抵抗を感じています。しかしコロナ禍で登壇イベントが増えたこともあり、自分の人柄を出すことが相手のより深い理解に繋がるということを実感するようになりました。

「高橋さんは本当はこんな感じの人なんだ」というリアクションがあると、書き手の素顔を知りたいと思っている読者が多かったんだということに気がつきます。今では素の自分を知ってもらうってことはマイナスじゃないかもしれない、と思えるようになりました。

ただし、日記みたいにはならないように、あと人の悪口は書かないように気をつけています。あくまでも一つの読み物として成立するように、少し考えたりしてまとめるように意識しています。

大きな媒体や SNS での発信は、こちらが意図しない文脈で絡まれることもあるので、自分の内面を出すのは、適度に閉鎖的な theLetter で発信するようにしています。

この適度な閉鎖性は、書く内容にも影響しています。私のニュースレターでは「あの記事のB面」というシリーズを書いています。

取材情報というのはすべてを記事として世に出せる訳ではありません。文字数の制限もありますし、特に完全にオープンなウェブメディアでは誤解されかねない事実もたくさんあります。そういうこぼれ話や裏話を書くのに、theLetter は結構適していると思っています。有料限定配信にすることで、ゆっくりと冷静に読んでくれる読者さんだけに届けることができるからです。こちらの伝えたいことが、ほぼ伝わる感じが theLetter にはあります。

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今回インタビューにご協力いただいた高橋ユキの事件簿はこちら。

書き手向けのサインアップ方法や、他のニュースレターの事例はこちらから確認できます。

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ぜひ今回のインタビューをシェアいただけますと幸いです。

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