精神科医・藤野智哉さんに聞く「書いた記事の価値を倍にする方法」

精神科医の藤野智哉さんに、情報発信のノウハウについて伺いました。
theLetter運営 2025.03.13
誰でも

theLetter ストーリーは、theLetter 上で活躍する書き手の方々に、メディア運営方法や活用の理由などを深掘りする公式ニュースレターのコーナーです。

精神科医の藤野智哉さんは theLetter を利用し「精神科医 藤野智哉のニュースレター」を運営しています。前回『精神科医・藤野智哉さんに聞く「発信場所を移した理由」』を配信しました。

今回は執筆の方法について焦点をあててお話を伺いました。

誤情報の拡散を防ぐために専門家ができること

精神科医をしていると、「精神科医は患者を薬漬けにする」、「製薬会社と癒着している」といった都市伝説のような話を耳にすることもあります。精神科に限らず「患者を閉じ込めて虐待している」とか「人権を無視している」なんて極端な報道を見かけたことも。

残念ながら、そういう問題が過去に全くなかったわけではありません。ただ、実際にはそんなケースはごく一部です。それでもニュースやSNSなどでセンセーショナルに語られたものが拡散されると「そういうものだ」と信じてしまう人たちがいる。それは信じた人に問題があるのではなくて、単に真実が見えないからなんです。

であれば、誰がその「見えない部分」を伝えるのか? それは、私たち医師などの医療業界にいる専門家の役目だと思っています。困っていて熱心に情報を探している人ほど敏感になっています。だから、専門家が正しい情報を出さずに黙っていること自体が、不安や誤解を生む原因になっているんじゃないかと思うんです。

「エセ医療」がバズっているのを見て違和感を口にする医師はたくさんいますが、それに対して積極的に発信する人は少ない。「自分のところに来る患者さんを救うことが仕事」と割り切っている人もいます。でも、私はもう少しできることがあると思うんです。誤った情報を信じて病院に辿り着けない人たちに、現場の正しい情報を伝えて救うことができるのは現場の人間だけですから。

一度執筆した記事は、「二次利用」する

そんな思いで行っている発信活動のひとつが、本の執筆です。2月に新しい本も出版されますが、theLetterで書き溜めた記事の内容がここにも活かされています。

theLetterでは、書き溜めた記事の内容を他の媒体へ「二次利用」することが可能で、本だけでなく、noteなどにそのまま投稿することもできますし、動画や音声での発信をする人なら話すネタとしても使えるでしょう。

私はメディアでインタビューを受ける機会も多く、過去にさまざまな場所で記事が公開されています。しかし、それらの記事から話した内容を探すのは困難です。一方、theLetterでは記事がひとつの場所にまとまっていて検索も容易なので、すぐに見つけられます。数ヶ月書き溜めていくと、それらの記事がさまざまな場面で活用できるようになり、価値がどんどん大きくなっていくことに気づきました。

theLetter自体にも、ニュースレター用に書いた記事を SmartNews+、ITmedia、朝日新聞デジタルなどの有名媒体に”二次利用”して載せられる「マルチ配信」という仕組みがあります。SmartNewsのような巨大なプラットフォームに個人で記事を載せるのは難しいものですし、普通ならお金を払って掲載してもらう必要があります。しかし、「マルチ配信」を使えば、掲載に応じて収益が得られ、その記事単価は手数料を差し引いても他より高いのではないでしょうか。また、広く届ける必要のある記事を、購読者だけでなく普段はリーチできない層にも届けられる点も魅力です。

記事と媒体のアルゴリズムがうまくマッチすると、PV数が一気に伸びることもあります。この「跳ねる」瞬間があることで、発信者としては緊張感が生まれ、結果的に記事の品質向上にもつながると感じています。

theLetter マルチ配信は、SmartNewsやMicrosoft Start等、外部配信が可能

theLetter マルチ配信は、SmartNewsやMicrosoft Start等、外部配信が可能

2025年2月現在、購読してくださっている方は6,000人を大きく超えています。Xにはもっと多くのフォロワーがいますが、数だけでは単純比較ができない価値がtheLetterにはあります。本を出版するときにニュースレターで情報を共有すると、Xでのシェアでは得られない質の反応が返ってきます。

theLetterの読者は、わざわざメールアドレスを入力して登録するほど能動的に「知りたい」という気持ちの強い人たちです。だから、もし記事で誤解をされるようなことがあったのなら、それは私の書き方の問題。そういった方々からの批判は自分自身の学びになるので、きちんと受け止めたいですね。

本に書かれている内容とニュースレターの内容に共通する部分もありますが、それでも「本も欲しい」と言ってくれる人がたくさんいます。売上だけを重視するなら当たり前に正しいことより意外な嘘、つまり「今の医療は間違っている」なんて煽る本を書く方が売れるのでしょう。でも、逆に言うと、そうじゃない土俵で正しい情報を発信しているから継続して応援してもらえているのだと思います。

自分の発言をコントロールするには

ニュースレターで発信していると意外に思われるのですが、文章を書くこと自体は得意な方ではないんです。ただ、言葉選びには注意し、できるだけ配慮した発言を心がけています。とは言っても、記事はニュースレターやマルチ配信を通じて多くの人の目に触れるので、「誰も傷つけない」ことは難しい。人間は常に誰かと関わっているのでどうしても誰かを傷つけてしまうことはあるものです。

自分が他人を傷つける可能性ーー「自己の加害性」について、人は無自覚です。精神科領域の話題は時にセンシティブな内容にも当然なり得るので、内容によっては自分が人を傷つけ得る覚悟を持って発言し、どうせ傷をつけてしまうならせめて余計な傷はつけずに伝えたいことを伝えるよう気をつけて書いています。そういった発言における自己の加害性をコントロールできるのも、直接読者とつながれるtheLetterだからこそ可能なのかもしれません。

次回『精神科医・藤野智哉さんに聞く「現場医師こそ発信活動に向いている理由」』に続く

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