誰もが参加する「個の発信」を今支援すべき理由
theLetter 代表の濱本です。
theLetter は書き手がニュースレターを配信し、読者とのコミュニティを育てられるサービスです。サービスの本リリース前にもかかわらず、theLetter に対してたくさんの反響があり非常に驚いています!
さて今回の公式ニュースレターでは、ニュースレターの運営方法に関する Tips でもなければ、新機能のご紹介でもありません。我々の「考え」に関するものです。
情報や意見を発信するサービスが溢れる今、「このツールで何ができるのか?」ということの中で「サービスの思想」「運営者の考え」の重要性が増しているからなのか、書き手の方から我々の考えについてのご質問をいただくことが増えてきました。我々のサービスは「個の発信」を支援したいという思いからスタートしました。本ニュースレターではなぜ個人を支援するのか?ということについて我々の考えをご紹介できればと思います。
メディアの変化
私たちの「Why?」をご説明するためにはまず、メディアの変化について触れておく必要があります。
近年、インターネット上のメディアは様々なビジネスモデルや新サービスの登場によって常に変化し続けています。そうした変化の中でもとくに大きな流れを下記の 4 つにまとめました。
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組織 → 個人
この変化はメディア企業の経営が世界中どこを見渡しても苦しくなっていることの理由の一つでもあります。情報発信の民主化が大きな要因です。
昔は TV や新聞など情報流通が限られていましたが、今では SNS やブログ、Podcast や 動画を通じて誰でも情報発信ができます。何かの意見でも、地震の際の現地情報でも、ビジネスのアイデアでも。メディア企業などの専門組織からの情報発信は今後も重要ですが、個人の発信は増え続けるでしょう。 -
認知 → 貢献
そして、PV(Page View) 至上主義は読者を疲弊させつつあります。メディア企業のうち、上場企業の決算を見ると PV を成長させているメディアが多く感じますが、なぜかディスプレイ広告市場はマイナス成長(2018 vs 2019)あるいはほぼ横ばい(2018 vs 2020)です。全体感としては PV 単価が減っていることが予測できます(最近、テキストコンテンツ上の広告が明らかに増えていませんか?)。
PVを収益に変えるビジネスモデルでは、より多くのPV数を稼ぐための釣りタイトルやフェイクニュース、炎上商法が問題となっています。そうした記事に疲れた人は多いのではないでしょうか。2016年には WELQ 問題が起きました(皆さんは覚えていますか?)。
ビジネスモデルの転換がある一方、フォロワー数、PV、再生数などの認知の指標から、読了率、滞在時間、エンゲージメントなど「どれくらい満足してもらえたか?」といった読者への貢献度が重視されるようになりつつあります。 -
集成 → 選択
2020 年の「NAVERまとめ」サービス終了のお知らせに驚きました。これは象徴的な出来事だったような気がします。
以前私が事業の構想を考えている時に、普段の情報収集をどうやって行っているか?というインタビューをビジネスパーソン 10 名に行ったことがあります。その方々は Twitter を情報収集に活用していました。さらに深ぼると興味深いことに、アカウントのミュートやブロック機能、ワードのミュート機能を多用したり、Twitter にアクセスする時間を自ら制限したりと、情報の「ノイズ」の除去に苦心していることがわかりました。またオンラインコミュニティに所属していたり、Twitter のリスト機能を使ったりと、特定の情報発信者を選んで情報を受取っているようでした。
情報がまとまっているだけでなく、誰が情報を発信しているのか?ということの重要性が増し、選択的に情報を受け取るニーズが強まっているように思います。 -
集中 → 分散
Facebook は過去に、自社のプラットフォーム上(Facebook 上)でウェブアプリを作れるようにしたことがあり、Facebook 上で多くのソーシャルゲームができました。
1 つの SNS にさまざまな機能が揃っていましたが、Instagram や Snapchat、TikTok など多くのサービスが成長したことで、1 つのプラットフォームのみを使うユーザーは少なくなりました。
そしてプラットフォーム上でビジネスを行う個人や組織は、1 つのプラットフォームに依存するのではなく、「併用」や「使い分け」を行っています。YouTuber の動画の概要欄を見れば、多くのプラットフォームへのリンクを見つけることができます。
そして近年、上記でご紹介した変化によって新たな課題が生まれてきました。
情報収集と発信の課題
組織発信であれ個人発信であれ、PV を収益に変えるビジネスモデルのみでの運営は持続可能性が低いと言わざるを得ないでしょう。上記で取り上げてきたように世の中は変化している一方で、新たな課題が出てきています。
コンテンツの質の低下
メディアしかコンテンツを発信できない時代に比べ、今はコンテンツの消費スピードも供給量も格段に増えています。また有益に消費してもらえるか?という点より、いかに興味を引くか?が重要なので、コンテンツの満足度よりも見せ方(タイトルなど)のみに注力してしまったり、量産体制に投資せざるを得なくなったことを背景に、個人発信でも組織発信でもコンテンツの質を担保しずらくなっています。
特にメディア企業など収益を前提とした組織発信では、PV 単価が下がり続けると 1 コンテンツあたりの制作コストは下げざるを得ず、より興味を引くようなコンテンツをハイペースで制作し続けなければ存続すら難しい。そんな状況もあり、取材や編集にかけられる手間や時間が減る、チェックの甘い量産体制が作られる、質は低いのに人々の注意を奪うコンテンツが増え、読者からの信頼が落ちるという悪循環が起きています。
ノウハウの点在化
ここ数年は直接メディアや記事に課金ができるようなプラットフォームが増え、広告に頼らずにマネタイズすることができるようになりました。直接課金は大きな組織であれば万単位で課金ユーザーが必要ですが、個人であれば数百人〜数千人で十分な収益になるため、ニッチなカテゴリや個人の発信と相性の良いマネタイズ方法です。
しかし、取材を含めた記事制作や集客ノウハウなどが蓄積される組織と違い、個人発信ではノウハウが組織のようには共有されにくくなります。成功事例は世の中に多くあるものの、そういった成功ノウハウは点在しており、新しく発信を始める個人にとってとても非効率な現状があります。
書き手の疲弊
SNS は書き手の発信を広めてくれます。それは裏を返すと、我々がコンテンツをどのように読んでもらうかというコントロールを失っているということでもあります。発信に対して批判が上がるというのは健全な状態ですが、コンテンツによっては文脈を理解していない全く別のコミュニティまでその発信が広がってしまうことで誤読されるケースもあります。
あるコミュニティでは当たり前の前提も、別のコミュニティでは非常識だったりします。進化心理学では十分考えうる仮説も、ダイバーシティを推進するコミュニティでは非常識な主張にもなり得ます。ビジネスコミュニティでは尊敬され得るプロモーション手法の紹介も、消費者にとっては許せない手法かもしれません。
こういったケースが多々あるので、特定のコミュニティに対して建設的な意見や情報を発信することで貢献したい書き手は、あらゆるコミュニティの人に読まれても誤読されないように気をつけて文章を書く必要があります。そういった文章発信でのハードルは、書き手を過度に疲弊させることになり、結果的に読み手が受け取れていたはずの情報も世の中に出てこない、ということは日々起こっています。個人発信の心理的な安全性が担保されていません。このことは我々が行った 100 名以上のライター・ジャーナリストへのヒアリング調査からも明確に分かっていることです。
書き手への支援
上記で書いてきたような課題を解決することで、情報流通を少しでも良い方向にデザインできると信じて我々は theLetter をチームで開発しています。これが個人の書き手を支援する理由です。
theLetter は書き手と読み手のマッチングプラットフォームでもなければ、SNS でもありません。書き手を支援することで、結果的に読み手にとって良いサービスとなると考えています。図にするとこういうイメージです。
これまでの配信プラットフォームと theLetter の違い - theLetter公式ニュースレター
「支援」というと抽象的ですが、そこにはプロダクトやカスタマーサポート、ノウハウが蓄積されたドキュメント提供、書き手向けイベント開催が含まれます。まだ決まっていないことを書くのは憚れますが、今後は法的なサポートやファクトチェック、資金提供や専門家紹介などももしかすると有用な支援のオプションになるかもしれません。個人の書き手があらゆるノウハウにアクセスできるサービスに育てていきます。
そして上記の図でも分かる通り、theLetter は書き手と読者を直接つなぎます。そうすることによって、書き手は PV とかバズといったことではなくピュアに読者のために執筆するようモチベートされます。そして、読者は theLetter にお金を払っているという体験ではなく、自分にとって重要な情報を発信してくれる書き手に「直接サポートしている」という体験になります。こういった書き手と読み手の体験が、質の高いコンテンツを生み出していく原動力になると考えています。
theLetter はニュースレターとしてコンテンツを配信できるサービスです。
ニュースレターの大きな特徴として、読み手のもとに「届く」ことがあげられます。例えば Tweet の外部リンクの平均クリック率は 1.64 % だというデータもあります(HubSpot)。フォロワー数が数千人 ~ 数万人いても記事の更新を伝えられるフォロワーはほんの一部でしょう。一方で、theLetter は読み手の私的なメールボックスにコンテンツを届けれられるため、読まれやすいです。ニュースレターの平均開封率が配信数に対して約 65% 出ています。
こうした特徴があるため、1 人の読者あたりに読んでもらえる記事数は多くなると予想できます。記事を数本に渡って届けることによって 1 記事では伝えられない「前提」や「文脈」を理解してもらいやすいメリットがあります。Web 上にも記事を配信できるのですが、記事単位で閲覧制限をかけることができるため、書き手はコンテンツの文脈性の深さによって届き方をコントロールすることができます。こういったコントロールは、配信時の書き手の心理的な安全性を高めることができます。
スタート
今回は我々の考え方を語りましたが、実際に継続できるビジネスへとアイデアを発展させる必要があります。組織に所属しているかどうかに限らず、書き手が文章できちんと収益化できるサービスにしていきます。
本リリースもできておらずまだまだスタート地点にいるサービスですが、
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専門性があり、あるコミュニティに有益な情報を発信をしていきたい
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自分だけのニッチなテーマを持ち、読者を集めることができるかもしれない
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多くのファンがいて、ファンとのコミュニケーションを促進したい
上記のような書き手様がもしいらっしゃったらぜひ下記にご連絡ください。
itaru-hamamoto@outnow.jp
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